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グラデーションオーシャン

Our Research Topics

最近研究室で扱っているいくつかのテーマについて、紹介します

1.ペプチドジェミニ界面活性剤からの機能分子設計 

 ペプチドジェミニ界面活性剤(PG-surfactant)とは、2本のアルキル鎖をペプチド側鎖に含む両親媒性分子であり、学術分野では、意外なことに2012年に我々のグループで発表するまで(文献15)、この分子骨格を基盤とした機能分子開発に関する報告例はほとんどなかった。2本のアルキル鎖の導入位置に対してX部位、Y部位、Z部位を規定し、それぞれの部位に適切なペプチド配列を振ることで、二分子膜形成分子(文献15,17)、膜蛋白質化試薬(文献16,18)、膜蛋白質抽出試薬(文献19)、膜蛋白質ゲル化剤(文献6)、抗菌試薬(文献7、図10)など、異なる機能を持った分子の創出が可能であることをこれまでに明らかとしてきた。またリジンオリゴマー(Lys)n (n = 3~5)を、Y部位あるいはZ部位の位置に導入したものに関して、哺乳類細胞に対する毒性がほとんど現れない(IC50 > 200 µM)ことを発見し、この中からキャリア活性を持つCPPとして有名なR8ペプチドを凌ぐ効率で、細胞内に外来ペプチドを送達できる誘導体(K5-DKDKC12、K3-DKDKC12など)を既に見出し (文献22)、さらに実はR8ペプチドと同じように比較的分子量の大きなp53のような蛋白質(p53)についても、細胞質への輸送を可能とすることも明らかとしている。
(15) K. Umezaki, S. Sakai, S. Koeda, Y. Yamamoto, M. Kondo, A. Ikeda, T. Dewa, K. Taga, T. Tanaka, T. Mizuno*, Chem. Lett., 41, 1430 (2012). (16) S. Koeda, K. Umezaki, A. Sumino, A. Ikeda, Y. Yamamoto, T. Dewa, K. Taga, M. Nango, T. Tanaka, T. Mizuno*, Langmuir, 29(34), 11695 (2013). (17) S. Koeda, K. Umezaki, T. Noji, A. Ikeda, K. Kawakami, M. Kondo, Y. Yamamoto, J. Shen, K. Taga, T. Dewa, M. Nango, T. Tanaka, T. Mizuno*, Langmuir, 29(37), 11667 (2013). (18) S. Koeda, T. Suzuki, T. Noji, K. Kawakami, Y. Ido, T. Dewa, S. Itoh, N. Kamiya, T. Mizuno *, Tetrahedron, 72 6898 (2016). (19) M. Shibata, S. Koeda, T. Noji, K. Kawakami, Y. Ido, Y. Amano, N. Umezawa, T. Higuchi, T. Dewa, S. Itoh, N. Kamiya, T. Mizuno *, Bioconjugate Chem., 27, 2469 (2016). (20) A. Taniguchi, S. Koeda, T. Noji, K. Kawakami, N. Sumito, T. Dewa, S. Itoh, N. Kamiya, T. Mizuno*, Colloid and Interf. Sci. Commun. 32, 100199 (2019). (21) R. Kimura, M. Shibata, S. Koeda, A. Miyagawa, H. Yamamura, T. Mizuno*, Bioconjugate Chem., 29, 4072 (2018). Front Cover (22) N. Sumito, S. Koeda, N. Umezawa, S. Tsukiji, T. Higuchi, T. Mizuno*, Bioconjugate Chem., 31, 821-833 (2020). (23) T. Shimamoto, T. Nakakubo, T. Noji, S. Koeda, K. Kawakami, N. Kamiya, T. Mizuno*, Int. J. Mol. Sci., 22, 1524 (2021).
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図10 抗菌試薬として機能するPG-surfactant(文献21のFront cover)
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2.両親媒性を持った設計蛋白質からの蛋白質カプセル構築 

 近年抗体や核酸を用いたバイオ医薬品の開発と利用が進んでいるが、これらのさらなる進展・拡大のためには、生体環境下での安定性、細胞や組織内部への浸透性、ターゲティング能などを向上できる、新たな技術開発がキーと考えられています。我々は、天然蛋白質に含まれる構造モチーフの中でも、比較的単純なツーヘリックスバンドルモチーフに着目し、適切なアミノ酸配列の設計のもと、これらを集積化させることで、リン脂質リポソームの様な「タンパク質のみからなる蛋白質カプセル」構築が可能であること、さらにこの中に薬剤蛋白質を高濃度に内包可能となることを明らかとした。またこの蛋白質カプセル表面に、標的細胞表面に存在する受容体への結合抗体を修飾することで、標的細胞特異的にカプセルを取り込ませ、さらに予め充填されていた薬剤蛋白質を細胞内で作用させることも可能となるところまで明らかとしている。
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図2 バイオ医薬品の細胞膜透過キャリアとして利用可能な抗体を表面修飾された
​   蛋白質カプセルの開発
(24) T. Nishiyama, K. Sugiura, K. Sugikawa, A. Ikeda, T. Mizuno*, Colloid and Interf. Sci. Commun. 40, 100352 (2021).(25) K. Takahashi, T. Nishiyama, N. Umezawa, Y. Inoue, I. Akiba, T. Dewa, A. Ikeda, T. Mizuno*, Chem. Commun. 60, 968-971 (2024). (26) K. Takahashi, Y. Inoue, S. Hida, N. Umezawa, I. Akiba, M. Umetsu, T. Mizuno*, ChemRxiv, 10.26434/chemrxiv-2024-fq8fv-v2 (2024).
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3.蛋白質固定化不織布を用いた機能材料開発

 蛋白質の持つ分子機能は多彩であり、酵素1つとっても非常に高度な分子機能が達成されている。材料科学の世界では、残念ながらナノレベルまで材料形状・表面構造を設計・制御したとしても、このような高度な分子機能を発現させることには依然成功しておらず、やはり蛋白質の持つ分子機能(すなわち生理活性)をバルクな材料表面で発揮させるためには、蛋白質をうまくハイブリッドさせることは避けられない。
​ 我々は外部環境の変化により容易に機能が変性失活してしまう欠点を克服しつつ、蛋白質機能を発揮させられる材料設計の新たなコンセプトを考える中で、電界紡糸により作製可能な不織布という材料に出会った。不織布のナノ繊維内部に蛋白質を変性させることなく固定化し、さらにそのまま機能させられる新たなコンセプトを確立できたことで、これまでに固定化酵素やセンサー不織布(図)の開発などに成功している。
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図  乳酸蛍光蛋白質を繊維内部に固定化した不織布(左)と、乳酸の可逆的な
​   蛍光検出挙動(右)
(27) A. Obata, S. Ito, N. Iwanaga, T. Mizuno, J. R. Jones, T. Kasuga, RSC advances, 4, 52491-52499 (2014). (28) 水野稔久,小幡亜希子,Chemical Engineering, 60, 911-920 (2015).(29)  S. Koeda, K. Ichiki, N. Iwanaga, K. Mizuno, M. Shibata, A. Obata, T. Kasuga, T. Mizuno*, Langmuir, 32, 221-229 (2016). (30) C. Gao, S. Ito, A. Obata, T. Mizuno, J. R. Jones, T. Kasuga, Polymer, 91, 106-117 (2016). (31) Y. Ido, A. L. B. Maçon, M. Iguchi, Y. Ozeki, S. Koeda, A. Obata, T. Kasuga, T. Mizuno*, Polymer, 132, 342-352 (2017). (32) K. Mizuno, S. Koeda, A, Obata, J. Sumaoka, T. Kasuga, J. R. Jones, T. Mizuno*, Langmuir, 33, 4028-4035 (2017). (33) Y. Tanikawa, Y. Ido, R. Ando, A. Obata, K. Nagata, T. Kasuga, T. Mizuno*, Bull. Chem. Soc. Japan, 93, 1155–1163 (2020). (34) Y. Tanikawa, A. Obata, K. Nagata, T. Kasuga, T. Mizuno*, Curr. App. Poly. Sci. 4, 1 (2021). (35) T. Ishiguro, A. Obata, K. Nagata, T. Kasuga, T. Mizuno*, RSC Advances 22, 34931- 34940 (2022). (36) Y. Kato, S. Iwata, Y. Nasu, A. Obata, K. Nagata, R. E. Campbell, T. Mizuno*, RSC Advances 23, 29584-29593 (2023).
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4.天然樹脂セラックからの細胞培養材料開発

 (細胞医薬品やスキャフォールドを用いた)再生医療にも利用可能な、「細胞接着性・増殖性」と「生体吸収性」を同時に備え、かつ十分な力学強度を持った新規の樹脂性バイオマテリアルに対するニーズが高まっている。我々はチョコレートや錠剤の表面に塗布され、食べられる天然樹脂としても知られるセラックに着目し、ここから細胞培養材料にも利用可能な新規バイオマテリアル開発に成功した(図左)。細胞接着性の付与にはわずかな化学修飾を必要としたが、この化学修飾を光により切断可能なCaged esterとして導入することで、光により細胞接着性を変化可能な細胞培養材料の開発にも成功している(財団法人JKA助成金による成果はリンク先参照)。
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図 天然樹脂セラックからの細胞接着性を持った新規バイオマテリアル開発
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Y. Sunakawa, M. Kondo, Y. Yamamoto, T. Inomata, Y. Inoue, D. Mori, T. Mizuno*, ACS Applied Bio Materials 6, 5493-5501 (2023).

​名古屋市昭和区御器所町 19号館308

高分子化学分野 水野研究室

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